第五世代以降のすばやさの仕様はいつから知られていたのか知りたい
はじめに
ポケモンの行動順を決めるすばやさには、いくつかの仕様があります。10000以上になると10000扱いされたり、8191を越えるとオーバーフローのような現象が起きてしまったり、トリックルーム中にすばやさ1809~8191だと普通のポケモンより先に行動できたりします。トリックルーム中の現象については、本ブログでは「1809現象」と呼んでいます。
すばやさの仕様については、詳しくは以下の記事をご覧ください。
この仕様は、この記事を公開していた時点ではほぼ知られていませんでした。しかし、その後同じ週にポケモンソードシールドダウンロードコンテンツ第二弾の冠の雪原が配信スタートし、レジエレキが登場したことをきっかけとして、トリックルームの1809現象をレジエレキで再現した動画が出回り、知れ渡りました。
2010年登場の仕様が2020年になってやっと知られたわけで、「第五世代からずっとあった仕様にもかかわらずずっと知られていなかったのはなぜなのか」というツイートもありました。実際には、2011年の時点で既に世界の中に知っている人がいたのですが、今回はそのような「第五世代以降のすばやさの仕様についての情報」の歴史を調査したものを時系列順に並べて整理していきたいと思います。
とても長くなってしまったので、前半(第五世代〜第七世代)と後半(第八世代)に分けることにしました。
※ツイートなどの引用は著作権に配慮して行われています。
目次
- はじめに
- 目次
- 歴史
- 2010年9月18日 第五世代スタート
- 2011年6月1日 英語版ポケモンwikiのbulbapediaの「トリックルーム(技)」のページに1809現象が記載される
- 2011年8月30日 1809現象についての動画が投稿される(確認できる中で最古の動画)
- 2011年9月14日 1809現象についての英語ツイートが投稿される(確認できる中で最古)
- 2011年11月14日 海外で解析結果の可能性がある1809現象についての投稿が行われる
- 2011年12月20日 海外で1809現象についてサイトに記載される
- 2012年1月26日 海外ポケモンサイトSmogonに1809現象の情報が含まれる記事が投稿される
- 2013年5月31日 海外ポケモンサイトSmogonで1809現象について確認する会話が行われる
- 2013年10月12日 第六世代スタート
- 2016年11月18日 第七世代スタート
- 後編へ……
- 2010年9月18日 第五世代スタート
- おわりに
歴史
2010年9月18日 第五世代スタート
ポケモンブラック・ホワイトが発売されました。
2011年6月1日 英語版ポケモンwikiのbulbapediaの「トリックルーム(技)」のページに1809現象が記載される
編集履歴から調べました。
「第五世代には、すばやさ1809以上のポケモンがトリックルームの影響を受けないバグがある」という文が追加されました。
ちなみに、2020年11月1日現在のbulbapediaには、「第五世代以降、すばやさ1809以上のポケモンは、トリックルーム中でさえも、すばやさ1809未満のポケモンの前に行動する」と書かれています(Trick Room (move) - Bulbapedia, the community-driven Pokémon encyclopedia)。
2011年8月30日 1809現象についての動画が投稿される(確認できる中で最古の動画)
トリックルーム中のすばやさ1809以上の先制現象を、このブログでは「1809現象」と読んでいますが、海外では 「Trick Room Glitch 」と呼ぶようです (第八世代でダイウォールをまねっこしてトリックルームを発動させることもそう呼ばれることがあるようですが) 。そのタイトルで、動画が投稿されています。
トリックルームをした後テッカニンに交代し、特性「かそく」と技「こうそくいどう」で2ターンですばやさを6段階上昇させて4倍にし、トリックルーム最終ターンにテッカニンが1809現象で先に行動するという内容になっています。
この動画の投稿者ではないかと思われる方のブログのアーカイブサイトです。
Glitch City Laboratories Archives - Trick Room glitch
2011年9月14日 1809現象についての英語ツイートが投稿される(確認できる中で最古)
@PokeFacts If a Pokémon exceeds a speed higher than 1809, it will ignore Trick Room's effect and attack first in B&W http://t.co/XlJLwQI
— Muni (@MuniSenshi) 2011年9月10日
「ポケモンブラックホワイトでは、ポケモンが1809を超えるすばやさになると、トリックルームの効果を無視して最初に攻撃する」という内容です。少し間違っていて、訂正するなら、「1808を超えるすばやさ(a speed higher than 1808)」です。
2011年11月14日 海外で解析結果の可能性がある1809現象についての投稿が行われる
Pokemon Black Version Cheats, Codes, and Secrets for DS - GameFAQs
1809以上になるとトリックルームを回避できると書いてあります。
日付確認はGoogleの検索結果の表示のほか、この投稿記録らしきもの( GameFAQs Community - KeyBlade999 )から行いました。DS の項の Pokemon Black Version / Move First During Trick Room が11/11/14となっています。
この投稿記録は「CHIEATS/ACHIVEMENTS/TROPHIES」に分類されていたので、解析によって明らかにした可能性があります。
2011年12月20日 海外で1809現象についてサイトに記載される
Pokémon Black and White / Funny - TV Tropes(下の方)
Google検索ではこの日付で表示されましたが、後から更新された可能性があるので本当にこのときから書かれていたかは不明です。
「Trick Room 1809 pokemon」の2011年までの検索結果はおそらくここまでで全てです。
2012年1月26日 海外ポケモンサイトSmogonに1809現象の情報が含まれる記事が投稿される
A BW Guide to Trick Room in RU - Smogon University
トリックルームについてのまとめ記事に載っています。Google検索での表示に2012/1/26とありました。
「トリックルーム状態になると、1809を超える速度のポケモンという一つの例外を除いて、遅いポケモンが最初に行動する(ただし、こだわりスカーフテッカニンはほとんど脅威ではありません)。」という内容の文章があります。
「1809を超える速度(over 1809 Speed)」という箇所は間違いです。すばやさ1809ちょうどのポケモンは1809現象の対象で、トリックルーム中に最初に行動します。「こだわりスカーフテッカニン」の箇所は、こだわりスカーフとすばやさランク上昇ですばやさ1809以上になったテッカニンのことを指していて、そんなテッカニンがトリックルーム中に最初に行動するとしてもあまり怖くないということだと思われます。
2013年5月31日 海外ポケモンサイトSmogonで1809現象について確認する会話が行われる
Data - Pokemon Sun/Moon Battle Mechanics Research | Page 67 | Smogon Forums
海外のポケモンサイトSmogonにて、2017年の投稿に「トリックルーム中のすばやさはどのように正確に計算されているのかxfrに尋ねた4年前の会話ログ」として載せられています。
xfrという人の「速度が1808を超えるとオーバーフローします」というコメントがあります。1809現象は厳密にはオーバーフローではないはずですが、オーバーフローに近い現象です。
Martyという人の、「ああ、それはすばやさ2012のデオキシススピードフォルムがトリックルームですばやさ6以下のポケモンをまだ”上回っている”理由を説明している」というコメントもあります。
その他いろいろ会話がなされていますが、解読が不可能でした。ゲームプログラミングの知識に関わる会話だと推測しています。
2013年10月12日 第六世代スタート
ポケモンXYが発売されました。
2014年2月3日 第六世代で1809現象が確認される
Battle Mechanics Research | Page 52 | Smogon Forums
海外のポケモンサイトSmogonにて。
質問(URLのページの一番上の投稿)は、「ポケモンが素早さ1809に到達した場合、トリックルームを無視するというバグが前の世代にありましたが、XYについてはまだ確認されていないと思います」という内容。
回答(URLのページの上から5番目の投稿)は、何かの会話のログの引用となっています。そこには、すばやさ148のテッカニンが、すばやさランク最大・こだわりスカーフ・すいすい発動・おいかぜ状態・トリックルーム状態のときに最初に行動したと書かれています。このときのすばやさは148*4*1.5*2*2 = 3552です。
(最初においかぜ抜きのすばやさ1776で実験を行い、最後に行動したので、XYからバグが修正された!と言い、後から間違いに気がつく という面白い会話のログも一緒に載っています。)
2015年8月2日 日本語で1809現象に言及するツイートが投稿される①
POのソースコードの中に
— キャバレロがりゅう (@shingaryu) 2015年8月1日
gen 5 ignores trick room for pokemon with speed>=1809
とかいうコメント書いてあって意味わからなくて笑う
smogonには書いてあるけど実機では再現できなかったみたいだな
— キャバレロがりゅう (@shingaryu) 2015年8月1日
確認できる中だと、日本での最古の1809現象関連のツイートです。
「POのソースコード」が何を指すのか不明ですが、「gen 5 ignores trick room for pokemon with speed>=1809」は確実に1809現象を表す文章です。
このツイートからも、このときには既にSmogonには1809現象についての言及があったことが確認できます。
2016年11月18日 第七世代スタート
ポケモンサン・ムーンが発売されました
2017年3月2日 ポケモンwikiの「トリックルーム(技)」のページに1809現象について追記される
https://wiki.ポケモン.com/w/index.php?title=トリックルーム&diff=prev&oldid=300178
編集者は さたて さん。第五世代のバグという書き方で、第六世代以降についての言及はありませんでした。
2017年4月21日 第七世代で1809現象が確認される(すばやさ10000以上の扱いについても言及)
Data - Pokemon Sun/Moon Battle Mechanics Research | Page 67 | Smogon Forums
海外のポケモンサイトSmogonにて。66ページの最後の質問に対して、67ページの上3つが回答となっています。
2つ目の回答は、「すばやさが452と453のテッカニンを用意して、すばやさランクをどちらも最大にした場合(すばやさは1809と1812になる)、すばやさ453のテッカニンが最初に動き、すばやさ452のテッカニンが最後に動いた」という内容です。
トリックルームでないときにすばやさ8192以上だとオーバーフローすること、トリックルームの有無に関わらず10000より上のすばやさは10000として扱われることも述べられています。
2017年3月7日 日本語で1809現象に言及するツイートが投稿される②
どういうことなの… pic.twitter.com/UVBajy6M8l
— ユピ (@Chappyvillage) 2017年3月7日
すばやさ1809
— ユピ (@Chappyvillage) 2017年3月7日
一応ホワイトにデオキシスいるからカンストされて試したい気持ちはある(やらない)
— ユピ (@Chappyvillage) 2017年3月7日
レベル100のSVで極振りの性格一致スピードデオキシスに6段階ランク補正かけた時の数値が2000超え
— ユピ (@Chappyvillage) 2017年3月7日
1809現象の意味をしっかり理解して言及する日本語ツイートの中で、発見できるもののうち最古のツイートがこれです。 1つ目のツイートではポケモンwikiの「トリックルーム(技)」のページのスクリーンショットが貼られています。
2018年7月25日 すばやさ10000超えの動画が投稿される(おそらく世界初)
(2021年1月16日追記)
この動画についてのSmogonでの投稿
ジャイロボールの威力計算に使われるすばやさが、すばやさ計算のどの段階のものなのかを調べるテストのようです。結果としては、10000以上のすばやさを10000にする処理まで行ったタイミングの数値が使われています(くわしくはすばやさ - ポケモンWiki参照)。
レジエレキ登場前に実現できるすばやさの最大値16128を再現するおそらく世界初の動画です。同時に、すばやさ8191超えやすばやさ10000超えを実現する動画としても確認している中では最古です。
動画内のメタモンは、100レベ最速デオキシスのすばやさ実数値をスピードスワップで手に入れ、すばやさ6段階上昇・おいかぜ・スキルスワップで手に入れたサーフテール・スピードパウダーの効果を受けてすばやさ16128になっています。
後編へ……
おわりに
前半だけでも5000字以上という分量になり驚いています。たくさん引用したのもありますが…。
海外のサイトの内容をざっと知りたいとき、Googleのページ翻訳はとても便利でした。もちろん必要な箇所は原文を読むのですが、どこを読むかあたりをつけられるので良いです。
何か追加すべき情報がありましたら、Twitterにご連絡ください。
→ 後編